コエンザイムQ10のアンチエイジング効果
加齢によって減少するコエンザイムQ10
体内のコエンザイムQ10は20歳をピークに減少する
体内のエネルギー産生効率を高める働きを持つコエンザイムQ10は、20歳をピークに加齢によって減少することが知られています。
コエンザイムQ10は活発に代謝を行う器官ほど多く必要としています。そのため最も多くのエネルギーを消費する心臓では、20代と比較して40代では30%、80代では約半分まで減少します。
コエンザイムQ10は体内で生合成することができますが、年齢を重ねると合成される量が減るため不足すると考えられています。
コエンザイムQ10の減少は老化の原因に
加齢によってコエンザイムQ10が減少すると、作られるエネルギーの量が低下するため、元気がなくなり疲れを感じやすくなり、臓器の機能が低下してしまいます。
またコエンザイムQ10には優れた抗酸化作用があります。体内で不足することで活性酸素による細胞の酸化を防ぐことができなくなり、体全体が老化していきます。
このようにコエンザイムQ10は老化と密接に関係しています。アンチエイジングには加齢によって減少したコエンザイムQ10をサプリメントなどで補う必要があります。
還元型コエンザイムQ10の抗酸化作用が老化を抑制する
活性酸素が老化を促進させる
人間は酸素を取り込み細胞を動かすエネルギーに変えることで生命を維持しています。ところが口や鼻から取り込んだ酸素のうち、最大5%は活性酸素に変化します。
活性酸素は周辺の細胞から電子を奪うことで酸化させる性質があります。そのため体内で活性酸素が増えすぎると、細胞を錆つかせてダメージを与え、老化を進行させてしまいます。
例えば肌です。体内で作られた活性酸素は血流に乗って全身の肌に運ばれます。すると活性酸素によって肌が老化して、シワ、たるみが目立つようになります。
さらに老化によってターンオーバー(新陳代謝)が遅れるため、老廃物をスムーズに排出できなくなります。その結果として肌荒れが起こりやすくなり、肌がくすんでシミやそばかすが増えてしまいます。
コエンザイムQ10には酸化型と還元型がある
コエンザイムQ10は大きく分けて酸化型と還元型があります。酸化型とは酸素の影響で黄色く変色した状態です。還元型は酸化する前の真っ白な状態です。このうちアンチエイジングの鍵を握る抗酸化作用を持つのは還元型のみです。
とはいえ酸化型であっても体内で還元型に変換されるため、酸化型に全くアンチエイジング効果が期待できないわけではありません。
還元型の抗酸化作用
還元型コエンザイムQ10は体内で増えすぎた活性酸素を除去して、細胞が酸化によってダメージを受けるのを防いでくれます。
老化促進マウスを使った試験では、還元型コエンザイムQ10を投与することで、活性酸素による細胞のダメージを示す「酸化ストレス」の増加が抑制されることが分かっています。
さらに体内の活性酸素を除去する「抗酸化物質」の減少を抑制することも確認されました。(参考元1)この結果は還元型の抗酸化力の高さを示しています。
還元型の老化抑制効果
そこで酸化型と還元型のコエンザイムQ10を老化促進マウスに摂らせて、全11項目(活動性、眼病の有無、皮膚と被毛の状態、腫瘍などの皮膚疾患の有無など)をスコア化した老化度評点の変化を調べました。
その結果、還元型を含むエサを摂らせたマウスは、老化度評点の上昇が抑制されることが確認されました。一方、酸化型を含むエサを摂らせたマウスに同様の効果は確認されませんでした。(参考元1)
ミトコンドリアの働きを活性化して老化を抑制する
ミトコンドリアの働きが低下すると老化が進行する
私たちの体は60兆個もの細胞によって作られています。この細胞の一つ一つにはミトコンドリアと呼ばれる小器官が存在します。
ミトコンドリアは生命維持と生命活動に不可欠なATP(アデノシン3リン酸)を作り出しています。このミトコンドリアの働きを助けているのが補酵素であるコエンザイムQ10です。
コエンザイムQ10があるのとないのとではエネルギー産生の効率が28倍も違うと言われています。老化促進マウスを使った試験では、年齢を重ねるとミトコンドリアの働きが低下して、老化が進行することが分かっています。
還元型コエンザイムQ10がミトコンドリアを元気にする
これまでの研究では還元型コエンザイムQ10を摂ると、加齢によるミトコンドリアの働きの低下を軽減できることが分かっています。さらに加齢によるATPの産生量の減少も抑えられます。
また、私たちの体内では加齢によってミトコンドリアの数が減少することが分かっています。還元型コエンザイムQ10は加齢によってミトコンドリアの数が減るのを改善してくれます。
このような働きはコエンザイムQ10が体内の長寿遺伝子や分子を活性化することで、ミトコンドリアのコンディションをより良く保つためと考えられています。
つまり還元型コエンザイムQ10にはミトコンドリアを元気にすることで、老化を遅らせることができるのです。
加齢による難聴に対する効果
高齢になると聴力が著しく低下することがあり、「加齢性難聴」と呼ばれています。老化促進マウスを使った試験では、還元型コエンザイムQ10を投与することで加齢による聴力の低下が軽減されることが確認されています。
さらに高音域の聴力を失ったマウスに7ヶ月齢から投与したところ、この音域での聴力は回復しませんでしたが、中低音域の聴力低下を軽減できることが確認されました。(参考元1)
このような結果から、失った聴力を回復させる効果はないものの、加齢による聴力の低下を遅らせる効果が期待できることが分かりました。人間の高齢者が発症する加齢性難聴にも有効である可能性があります。
参考元1:コエンザイムQ10の基礎と応用 コエンザイムQ10協会編 丸善出版