コエンザイムQ10が不足すると
健康維持に不可欠なコエンザイムQ10
コエンザイムQ10はミトコンドリアの働きを助ける補酵素
私たちの体は約60兆個もの細胞によって作られています。この細胞の一つ一つにはミトコンドリアという小器官が存在します。
ミトコンドリアはエネルギーの製造工場としての役割を担っています。まず食品から摂取したビタミンB群などの栄養素をミトコンドリアが利用可能な状態にし、ATP(アデノシン三リン酸)を作り出します。
ATPは私たちの生命維持と生命活動に不可欠なエネルギー源です。このミトコンドリアがATPを作る働きを助けているのが補酵素であるコエンザイムQ10です。
あるのと無いのとでは全く違うコエンザイムQ10
とはいえコエンザイムQ10が体内に無かったとしても、ATPが全く作られなくなるわけではありません。なくても生きていくことはできます。
コエンザイムQ10が体内になかったとしてもミトコンドリアはATPを作り出すことができます。しかし、あるのと無いのとではエネルギー産生の効率が約28倍も違うと言われています。
ミトコンドリアの働きを助けるコエンザイムQ10の存在は、健康を維持するために不可欠な存在なのです。
コエンザイムQ10が不足すると
では体内のコエンザイムQ10が不足すると健康にどのような悪影響を及ぼすのでしょうか。
疲れやすくなる
コエンザイムQ10はミトコンドリアがATPを作るのを助けていますから、不足するとATPを効率良く作ることができなくなります。それによって活発に代謝を行い多くのATPを必要とする心臓、肝臓、腎臓、筋肉などに十分な量のATPが送られなくなります。
その結果として、体を動かすエネルギーが不足して疲れやすくなり、疲労の回復が遅れて倦怠感を感じやすくなります。さらに体に疲労が蓄積されていくことで肩凝りや腰痛、頭痛、めまい、不眠などの症状が出やすくなります。
「最近なんだか疲れやすい」「元気が出ない」「いくら寝ても疲れが取れない」という方は、体内のコエンザイムQ10が不足している可能性があります。
老化が進む
ATPは臓器や筋肉を動かすエネルギーとして使われるだけではありません。傷ついた細胞や組織を修復する役割も担っています。
私たちの身体では毎日数え切れないほどの細胞や組織が傷つき破壊されます。それでも体の機能を維持することができるのは、自らの力で傷ついた細胞や組織を元の状態に戻せるからです。
ところがミトコンドリアの働きが弱く、十分な量のATPが体全体に行き渡らなくなると修復が追いつかなくなります。
それによって引き起こされるのが老化です。分かりやすいのが肌の変化です。皮膚細胞が老化することで肌が潤いを保つことができなくなり、肌荒れ、シミ、そばかすなどが目立つようになります。
このような状態ではいくら外側からスキンケアを行っても根本的な解決にはなりません。コエンザイムQ10の不足が原因だからです。
体内の活性酸素が増える
コエンザイムQ10には優れた抗酸化作用があります。体内で活性酸素が増えると細胞や血管を錆つかせてしまいます。
活性酸素は体内に侵入した毒物やウイルスを分解するために必要ですが、増えすぎると肌荒れや動脈硬化などを引き起こしてしまいます。
コエンザイムQ10は体内で増えすぎた活性酸素を取り除くことで、細胞や血管の酸化を防いでくれます。体内にもともと存在するコエンザイムQ10にも活性酸素を取り除く作用があることが分かっています。
逆に言えば体内で活性酸素が増えるのはコエンザイムQ10の不足が原因である可能性があります。
コエンザイムQ10が不足する原因
健康な人はコエンザイムQ10を体内で生合成できる
コエンザイムQ10はビタミンとは違い必要な量を体内で生合成することができます。若くて健康な人であれば、サプリメントなどから補わなくても問題はありません。体内に存在しているコエンザイムQ10はミトコンドリアが作り出しています。
加齢やストレスによって減少する
ところが年齢を重ねると体内にあるコエンザイムQ10の量が減ってしまいます。その量は20歳をピークに減少していくことが分かっています。さらに体内で合成できる量も加齢によって減っていきます。
また高齢者は食欲が低下するため栄養不足になりやすく、そのことが体内のコエンザイムQ10の減少に繋がります。介護が必要で自力で十分な量の食事を摂れない方は特に要注意です。
さらにストレスや病気によって減少することも分かっています。他にもスタチン系の薬剤(高脂肪症の薬)や向精神薬の過剰使用もコエンザイムQ10を減らす要因です。
栄養バランスの乱れ
体内でコエンザイムQ10を生合成するためにはビタミンB1が不可欠です。食事の栄養バランスの偏り、あるいは栄養失調によって、ビタミンB1が不足するとコエンザイムQ10を生合成できる量が少なくなってしまいます。
欠乏症
体内のコエンザイムQ10は加齢や生活習慣などの二次的な要因で減ることがあります。体内のコエンザイムQ10の量が著しく少ない状態を「コエンザイムQ10欠乏症」と呼びます。
特にスタチン系の薬剤を服用している方は、副作用によって欠乏症を発症することがあるため注意が必要です。ただしビタミン欠乏症とは異なり、重篤なコエンザイムQ10欠乏症は報告されていません。
生合成遺伝子の変異によるコエンザイムQ10欠損症
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コエンザイムQ10欠損症とは
体内のコエンザイムQ10が不足するのは、加齢やストレス、スタチン系の薬剤の服用といった二次的な要因だけではありません。コエンザイムQ10の生合成に必要な遺伝子の変異という一次的な要因も考えられます。
コエンザイムQ10を合成するために必要な遺伝子が変異を起すことで、十分な量のコエンザイムQ10を生合成ができなくなる症状を「コエンザイムQ10欠損症」と呼びます。日本ではコエンザイムQ10欠損症が病気や健康に及ぼす影響についてあまり理解が進んでいません。
近年の研究では十分な量のコエンザイムQ10を合成できない状態が続くと、重篤な病気を引き起こすことが次々に明らかになっています。
生合成遺伝子の変異と病気の因果関係が解明され、コエンザイムQ10欠損症の事例の報告が少しずつ増えているのです。コエンザイムQ10の量が44%以下のとき症状を引き起こす
コエンザイムQ10欠損症を引き起こすかどうかは、遺伝子の種類とその変異部分、コエンザイムQ10の量によって決まります。最近の研究では変異を起す原因遺伝子として7種類が発見されています。
コエンザイムQ10の量は正常な人の何%存在するかで判断し、44%以下の場合に欠損症を引き起こすことが分かっています。
ただしコエンザイムQ10の量を測定している細胞組織と、症状が出ている組織が異なる場合があり、量には個人差もあるため、一概にコエンザイムQ10の減少率だけで判断することはできません。コエンザイムQ10欠損症の症状
コエンザイムQ10欠損症で共通的に見られる症状としては、脳筋症、小脳性運動失調症、ネフローゼ症候群などがあります。
脳筋症はミトコンドリアを原因とする病気の一つです。コエンザイムQ10の合成量が少ないことで、脳と筋肉にエネルギーが十分に行き渡らないために起こる運動障害や脳卒中などの症状を指します。
小脳性運動失調症は言葉のもつれ、手の使いづらさ、めまい、歩行時のふらつきなどの症状が特徴です。ネフローゼ症候群は多量のたんぱく質が尿に排泄されることで、低たんぱく血症とむくみを引き起こす腎臓病です。ほかにも難聴、肥満、過食症、神経障害、視神経萎縮、末梢神経障害、弁膜症、巨頭症、急性腎不全、肝不全、低血圧、てんかん、糖尿病など脳や神経系の障害を中心にさまざまな症状との関係が指摘されています。