コエンザイムQ10の副作用
コエンザイムQ10は安全性の高い成分
体の疲れを取ったり抗酸化作用が期待できるコエンザイムQ10は、優れた効能を持つことから近年になり注目されている成分です。健康のために摂りたいと考えている方が多いのではないでしょうか。
そこで気になるのが副作用です。コエンザイムQ10はまず医療用医薬品として承認され、1991年には薬局で誰でも購入できるOTC医薬品として認められました。
そして2001年には健康食品として認可され、今日ではさまざまな種類のサプリメントが販売されています。副作用が少ないことも健康食品として認められた理由の一つです。
コエンザイムQ10は「神様の贈り物」「100年に一度の素材」と呼ばれるほど優れた安全性と機能性を兼ね備えています。これまでに死亡事故は発生していません。
私たちの体内に存在する成分であるため、基本的には体への害がなく安心して摂ることができます。
副作用の発現率
安全性の高さが認められているコエンザイムQ10ですが、副作用のリスクが全くないわけではありません。医薬品に使われている成分である以上、摂取の仕方や体調によっては副作用が現われることがあります。
ではどれくらいの確率で副作用が現われるのでしょうか? 医療用製剤の場合、副作用の発現率は1.36%でした。その内訳は以下の通りです。(参考元1)
消化器症状(胃部不快感、食欲不振、悪心、嘔気、下痢) | 0.97% |
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過敏症(発疹、浮腫、かゆみ) | 0.27% |
その他(口の渇き、動悸、体のほてり) | 0.12% |
コエンザイムQ10を摂った方のうち、副作用が現われた方は100人に1人程度と非常に低い発現率であることが分かります。またこれらの症状はいずれも軽く、過去の症例を見ても重篤な症状はほとんど報告されていません。
コエンザイムQ10の関与が疑われる肺炎
コエンザイムQ10を摂取した後に肺炎を発症した事例
安全性の高さが認められているコエンザイムQ10ですが、過去には薬剤性肺炎との因果関係が疑われる事例が報告されています。
- 【コエンザイムQ10の関与が疑われている肺炎の詳しい事例】
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61歳女性。友人から勧められてコエンザイムQ10を含むサプリメントとシソエキスを含むサプリメントを摂取していました。なお同じ時期に薬剤の服用は行っていませんでした。
摂り始めてから2ヶ月程経つと咳や発熱の症状が出るようになりました。この女性は当初、「風邪か花粉症では」と考えて様子を見ていました。
ところが一向に体調が良くならないため病院を受診したところ、末梢血の好酸球数が著しく増加していることが判明し、薬剤性肺炎と診断されました。
抗菌剤と抗生物質を投与しましたが症状は改善されず、コエンザイムQ10の副作用を疑って摂取を中止したところ、53日程で完治しました。(参考元2)(参考元3)
コエンザイムQ10の関与が疑われている
その後に被害女性が摂っていたサプリメントに含まれる各成分を取り寄せて、薬剤リンパ球刺激試験(DLST)を行いました。
その結果、コエンザイムQ10を含むサプリメントとコエンザイムQ10の両方に高い刺激性があることが確認されました。(参考元3)(参考元4)
現在でもコエンザイムQ10の関与が疑われています。この被害女性の事例は、コエンザイムQ10を含むサプリメントが必ずしも安全ではないことを示しています。
飲み合わせによって副作用を引き起こす可能性もある
薬剤性肺炎を発症した被害女性は、コエンザイムQ10と一緒にシソエキスを含むサプリメントを摂っていました。
これまでのところコエンザイムQ10とシソエキスの併用について危険性は指摘されていません。しかし、危険性が確認されていなくても、体調や持病によっては健康状態が悪化する可能性があります。
個々の成分は安全性が高く副作用のリスクが低いからといって、何でも一緒に摂れば良いというものではありません。特にサプリメントに使われている成分は、天然由来であってもその多くは抽出したエキスを濃縮したものです。
このような高濃度の成分をいくつも合わせることで体に刺激を与え、組み合わせによっては副作用を引き起こす可能性があると考えられています。
副作用のリスクを減らすためにすべきこと
空腹時の摂取は避ける
空腹時の摂取を避けましょう。コエンザイムQ10は製造段階で特別な加工を行わない限り、脂に溶ける脂溶性で、脂質の一種です。
脂質は消化吸収に時間がかかり胃腸に負担がかかります。そこで私たちの体内では胆のうから胆汁酸を小腸に分泌させることで、脂質を乳化させて吸収時の負担を軽減しています。
この胆汁酸は食事をすることで分泌されるため、コエンザイムQ10を摂るタイミングとしては食後が適しています。
極端な大量摂取は避ける
優れた効能を持つコエンザイムQ10は摂取量が少ないよりも多いほうがより高い効果が期待できます。だからといってとにかくたくさん摂れば良いわけではありません。
一般的にコエンザイムQ10は大量に摂取しても副作用が出にくいと考えられています。アメリカで行われた臨床試験では、パーキンソン病患者に1日1200mgという大量のコエンザイムQ10を投与しましたが、何の副作用も現われませんでした。(参考元1)
ですが全く副作用のリスクがないわけではありません。副作用が出るか出ないかは個人差によるものが大きいからです。コエンザイムQ10を大量に摂ることで、のぼせ、ほてり、動悸、息切れなどを引き起こす恐れがあります。
大量摂取による副作用を防ぐためには、医薬品の場合は用量を、サプリメントの場合はパッケージなどに書かれている1日の摂取目安量を守る必要があります。
持病のある方はかかりつけの医師または薬剤師に相談する
持病のある方はコエンザイムQ10の摂取を始める前に、必ずかかりつけの医師または薬剤師に相談してください。医薬品製剤の場合、高血圧症、呼吸器疾患、腎臓病、甲状腺疾患の影響で、動悸、息切れ、むくみなどの副作用が現われることがあります。
医薬品とサプリメントの違いを理解して摂取する
コエンザイムQ10は医薬品にもサプリメントにも配合されている成分です。同じ成分が医薬品とサプリメントの両方に使われることは珍しくありません。
ですが医薬品とサプリメントでは法律による規制が大きく異なります。医薬品は安全性を証明するために厳しい試験が課されています。
さらに過剰摂取を防ぐ目的で厚生労働省によって摂取量の上限が厳しく定められています。
一方のサプリメントは医薬品のように厳しい法律の規制を受けることがなく、安全性の確認については製造メーカーに委ねられています。
つまり医薬品と同じ成分が配合されていても、あくまでサプリメントは食品に過ぎないのです。サプリメントを購入する場合は、効果よりもまず安全性を第一に考え、無理な摂取は避けましょう。
副作用が現われた場面は摂取を中止する
コエンザイムQ10の摂取によって何らかの副作用が現われた方は、ただちに摂取を中止してかかりつけの医師やコエンザイムQ10に詳しい薬剤師に相談してください。
また医薬品やサプリメントとの飲み合わせの判断については専門的な知識が必要です。医師に相談して適切な指示を得てください。
参考元1:「コエンザイムQ10」で元気が出る、病気が治る! 永田勝太郎著 日本文芸社
参考元2:【新連載】52.健康食品・サプリメントによる副作用 全日本民医連
参考元3:コエンザイム Q10 の関与が疑われた薬剤性肺炎の 1例
参考元4:Case of drug-induced pneumonitis associated with a dietary supplement containing CoQ10.