心臓疾患のある人はコエンザイムQ10を摂っても良いか
心臓疾患があってもコエンザイムQ10を摂ることができる
心臓疾患のある人が摂っても問題ない
疲労回復効果や抗酸化作用が特徴のコエンザイムQ10は、テレビ番組などで取り上げられたことがきっかけで日本でも有名になり健康食品として普及しています。
健康のためにコエンザイムQ10を摂りたいと考えている方が多いのではないでしょうか。そこで気になるのが、どんな人がコエンザイムQ10を摂ることができるのかという問題です。
特に心臓疾患を抱えている方は、「摂っても大丈夫か」「体調を崩すことはないか」と神経質になりがちです。
結論から言えば心不全、狭心症、心筋梗塞、不整脈などの心臓疾患をお持ちの方が、コエンザイムQ10を摂っても全く問題ありません。
そもそも日本でコエンザイムQ10は心臓病の治療薬として開発された経緯があります。1973年に心臓機能が低下する「うっ血性心不全」の治療薬として国に認可されました。
ですからコエンザイムQ10を摂って心臓機能に問題が生じることはありません。それどころか心臓機能が回復する効果が期待できます。
コエンザイムQ10は安全な成分
コエンザイムQ10は副作用が少なく、非常に安全性の高い成分です。誰でも薬局で買うことができるOTC医薬品として認められています。
2001年には食品として認められ、サプリメントなどの健康食品として販売されています。このことが何よりも安全性の高さを証明しています。
心臓疾患は命に関わる病気ですが、2018年現在、これまでのところコエンザイムQ10による死亡事故は発生していません。
- 【コエンザイムQ10の安全性を示す試験結果】
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うっ血性心不全の患者25名にコエンザイムQ10を一日30mg、6~21ヶ月摂ってもらったところ、全く副作用が認められなかったという報告があります。(参考元1)
スタチン系の薬剤とコエンザイムQ10の関係
コエンザイムQ10の生合成を阻害するスタチン系の薬剤
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高脂血症の治療薬であるスタチン系の薬剤(HMG-CoA還元酵素阻害薬)は、血中コレステロール値を下げる優れた作用が認められています。
このため心筋梗塞を予防するために使われることがあり、心臓疾患とも関係が深い薬剤です。しかし、このスチタン系の薬剤を服用すると体内のコエンザイムQ10の生合成が阻害されてしまいます。
その結果として、体内のコエンザイムQ10が不足することで欠乏症になる可能性があります。スタチン系の薬剤を服用することで心臓に十分な量のコエンザイムQ10が届かず、心臓機能が低下する恐れがあるのです。
コエンザイムQ10は心筋が心臓拍動を行うために必要な成分です。心筋の働きが低下すると血液を押し出すポンプ作用が低下して、血液の循環が悪くなります。
コエンザイムQ10を摂ることで副作用を緩和できる
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コエンザイムQ10はスタチン系の薬剤の副作用を緩和する効果が期待されています。スタチン系の薬剤によって心臓機能が低下した方に、コエンザイムQ10を投与することで症状が治まったという報告がいくつもあります。
ただし、これまでのところコエンザイムQ10を投与することで、副作用を防ぐことが出来るかどうか明確に示されているわけではありません。また、スタチン系の薬剤による副作用と心不全の症状に明確な関連性は認められていません。
心臓機能の回復効果が期待されているコエンザイムQ10
体内で最も多くのコエンザイムQ10を必要とする心臓
コエンザイムQ10は、ミトコンドリアがATP(アデノシン3リン酸)を作り出す働きをサポートする補酵素です。ATPは生命維持と生命活動に不可欠なエネルギー源です。
このATPを作り出すために必要なコエンザイムQ10は、活発に代謝を行う組織ほど多く消費します。私たちの体内で最も活発に活動しているのは、片時も休みなく稼動し続ける心臓です。
心臓は血液を押し出して全身に循環させるポンプの役目を果たしています。このポンプ機能は心筋と呼ばれる心臓の筋肉が行っています。そして心筋を動かすためには多くのATPが必要なのです。
- 【心臓病とコエンザイムQ10の量の関係を示す研究結果】
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アメリカのテキサス大学のカール・フォルカース博士は、心臓病患者の75%は健康な人と比べて心臓の組織中のコエンザイムQ10の量が極端に欠乏していることを報告しています。(参考元1)
心臓機能を回復させる効果が期待されている
コエンザイムQ10は1956年に発見されて以来、世界中で心臓病に対する効果を調べる研究が行われてきました。うっ血性心不全を中心に多くの研究で有効性が認められています。
日本では元大阪大学総長の故山村雄一教授が中心になって研究を行い、心不全患者の約70%が改善したと報告しています。(参考元1)
アメリカではカール・フォルカース博士が、中高年のうっ血性心不全患者にコエンザイムQ10を投与したところ、3/4の方が有意な効果が得られたと報告しています。(参考元1)
イタリアで行われた研究では、うっ血性心不全患者2664名を対象に1日100mgのコエンザイムQ10を3カ月間摂ってもらいました。
その結果、被験者の54%が動悸、発汗、不整脈、肺水腫、心臓性喘息、呼吸困難、不眠などのうち少なくとも三つの症状が改善することが認められました。(参考元2)
効果を疑問視する意見もある
うっ血性心不全に対する効果を疑問視する意見
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近年ではコエンザイムQ10の心不全に対する有効性について、科学的根拠が不十分であるとして疑問視する意見があります。
うっ血性心不全の患者46名を対象に、効果が認められた研究と同じような量と治療期間で他の研究者が効果を調べたところ、心臓駆出率や酸素消費量がほとんど向上しなかったという報告があります。(参考元3)
有効性を疑問視する研究者は、うっ血性心不全に対する有効性を調べた初期の研究が、いずれも規模が小さく観察期間が短いことを理由に挙げています。
さらにアメリカ心臓学会とアメリカ心臓協会は、コエンザイムQ10の治療目的の摂取について「心不全の治療効果について、さらに多くの科学的根拠が蓄積されるまで推奨できない」という立場をとっています。(参考元4)
狭心症に対する効果を疑問視する意見
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狭心症については、コエンザイムQ10を経口摂取することで運動能力が改善する可能性があるという研究結果があります。(参考元5)しかし、コエンザイムQ10の狭心症に対する効果については疑問視する意見があります。
アメリカ心臓学会とアメリカ心臓協会は、コエンザイムQ10の治療目的の摂取について「慢性安定狭心症の治療には有益および有効ではない」という立場をとっています。(参考元6)
その他の心臓疾患への効果は認められていない
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うっ血性心不全、心不全、狭心症以外の心臓疾患に対する効果を示す研究結果はありません。不整脈についてはかつて日本で不整脈治療薬として利用されていました。
しかし、その後の研究で効果に対する疑問が生じたため、現在は処方箋による医薬品としては認められていません。
コエンザイムQ10は軽度の心不全の治療薬
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とはいえコエンザイムQ10に心臓機能を回復させる効果が全くないというわけではありません。活発に代謝を行う心臓は最も多くのコエンザイムQ10を必要としています。
心臓疾患患者の多くが心臓の組織中のコエンザイムQ10の量が欠乏しているという報告からも、不足するコエンザイムQ10を補うことは意味があります。もちろんコエンザイムQ10を摂ったからといって、心不全の症状が劇的に良くなるとは限りません。日本で医療用のコエンザイムQ10は軽度の心不全の治療薬として使われています。
ですから重度の心不全に対してではなく、軽症や慢性的な心不全の治療薬として利用する価値があります。これらのことから心不全の治療効果を期待する場合、コエンザイムQ10だけを摂るのではなく他の治療薬と併用することが望ましいと言えます。
未病のうちに対処することが大切
心臓疾患に限ったことではありませんが、大事なことは軽い症状のうちに対処することです。東洋医学で病気に至る前の段階を「未病」と言います。心不全などの心臓疾患にも未病の段階があります。
足のむくみ、動悸、息切れ、めまい、立ちくらみなどの症状に悩まされている方は、心臓機能が低下している可能性があります。特に要注意なのが夜間頻尿です。寝る前に水分を摂ったわけでもないのに、一晩に3回以上トイレのために起きるという方は夜間頻尿です。
このような心不全の初期症状を見逃さないようにしましょう。
コエンザイムQ10は未病の段階であっても効果が期待できます。少しでも不安のある方は病院で検査を受けることをお勧めします。そして医師に相談のうえで、コエンザイムQ10の利用を検討してみてください。
参考元1:コエンザイムQ10の魅力 神様の贈り物 永田勝太郎著 佐久書房
参考元2:Italian multicenter study on the safety and efficacy of coenzyme Q10 as adjunctive therapy in heart failure. CoQ10 Drug Surveillance Investigators.
参考元3:The effect of coenzyme Q10 in patients with congestive heart failure.
参考元4:ACC/AHA 慢性心不全治療診断ガイドライン2005
参考元5:Effects of coenzyme Q10 on exercise tolerance in chronic stable angina pectoris.
参考元6:ACC/AHA 慢性安定狭心症治療ガイドライン2005