コエンザイムQ10の構造
私たちの体内にたくさん蓄えられているコエンザイムQ10は、細胞の小器官であるミトコンドリアの働きを助ける補酵素です。
コエンザイムQ10の構造は、ベースとなる「キノン骨格」とそこから伸びる「イソプレン(ユニット)」という側鎖によって成り立っています。
またコエンザイムQ10は構造の違いによって、「トランス体」と「シス体」に分けることができます。
キノン骨格とイソプレンから構成される
イソプレン鎖を10個持つからコエンザイムQ10
コエンザイムQ10は、ベースとなる六角形のキノン骨格と、そこから角のように伸びるイソプレン(ユニット)と呼ばれる五つの炭素によって構成されています。
コエンザイムは補酵素という意味で、ユニットの数が10個あることからQ10とつけられました。また合計50個の炭素を持つことからコエンザイムQ (50) と表記することもあります。
なおイソプレンのユニット数が1~12個持つコエンザイムQ1~Q12も見つかっていますが、人の体内に存在するのは主にコエンザイムQ10です。
コエンザイムQ10の化学構造は、1958年にアメリカの研究者であるフォルカース教授らによって決定されました。
側鎖の長さが優れた抗酸化作用をもたらしている
側鎖が長いコエンザイムQ10
コエンザイムQ10にはイソプレンの数が異なる多くの仲間(同族体)が存在します。例えば出芽酵母はコエンザイムQ6、大腸菌はコエンザイムQ8、ラットはコエンザイムQ9を有しています。
このユニットの数の違いは、キノン骨格から伸びる側鎖の長さの違いを意味しています。中でもユニット数が多いコエンザイムQ10は、他の仲間よりも側鎖が長いのが特徴です。
優れた抗酸化作用をもたらしている
側鎖が長いことで得られるメリットは酸化への強さです。物質は電子を放出したり受け取ることで酸化していきます。
例えばリンゴの表面が空気に触れると茶色く変色するのは、リンゴの細胞が電子を放出することで酸化したためです。
側鎖が長いコエンザイムQ10は、電子を放出しにくく、受け取りにくいという性質を持ちます。
さらに側鎖の数が多いことで、イソプレンが折り畳み構造をしていることも酸化に強い理由と考えられています。
コエンザイムQ10にはビタミンEと同等の優れた抗酸化作用がありますが、キノン骨格から伸びる側鎖の長さと折り畳み構造がもたらしているのです。
構造の違いによってトランス体とシス体に分けられる
コエンザイムQ10は構造の違いによってトランス体とシス体に分けることができます。
トランス体の特徴
トランス体は酵母などの微生物由来のコエンザイムQ10で、「発酵法」と呼ばれる製法によって作られます。
酵母などの微生物を発酵させることで培養したコエンザイムQ10は、自然界に存在するものと同じ構造をしています。
発酵法では抽出、精製、結晶化、乾燥という工程を経て製品化されます。こうして作られるトランス体のコエンザイムQ10は、人間の体内に存在するものと変わりがありません。
天然由来であり化学的な成分を含まないため、より高純度のコエンザイムQ10を製造することができます。
トランス体のコエンザイムQ10は非常に安全性が高く、副作用のリスクが低いというメリットがあります。
シス体の特徴
シス体は化学的に合成を行うことでイソプレンのユニットを付け足していく、「合成法」と呼ばれる製法で作られます。
合成法で原料となるのは酵母などの微生物ではなく、タバコの葉に多く含まれるソラネソールという物質です。
このソラネソールはイソプレンを9個持つため、数工程の合成によってコエンザイムQ10を作り出すことができます。
合成法は比較的容易にコエンザイムQ10を作り出すことができることから、多くのメーカーが採用している製法です。
一方で化学的に合成することで、自然界に存在するコエンザイムQ10には含まれない不純物が混ざる可能性があります。シス体はトランス体よりも純度が低いとされています。
このようなことからシス体のコエンザイムQ10は、トランス体のコエンザイムQ10よりも副作用のリスクが高いという指摘があります。
シス体を全く含まないオール・トランス型
コエンザイムQ10を配合したサプリメントはさまざまなメーカーが製造販売しています。
一部のメーカーでは酵母から抽出したトランス体のみを含む、「オール・トランス型」のコエンザイムQ10を製造しています。
オール・トランス型は肉や魚に含まれるコエンザイムQ10と全く同じ構造であるのが特徴です。
シス体を含まない全て天然由来であり、その安全性と信頼性の高さは世界でもトップクラスとして認められています。
オール・トランス型のサプリメントは、より安全で高品質のコエンザイムQ10を求める方にお勧めです。